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           評定所

 

混効験集 乾坤

 

 

           評定所

 

 

混効験集 

 

 

 混効験集一巻 内裏言葉

夫我朝は神国御本地辨財天

なりむかしは御神出現有て人の

善悪をあらはし給ふなり去

によりみせゝるの言葉を俗語と

する故優にして美尽せり然かし

いへとも世遠してやや減少すかる

〇へに  尚貞尊君叡慮

からぬ事(         )

宣旨を下し給へ〇果して知る者  

なし 時に 尚賢尊君御 宇

下つかた三代に使奉る一人の官女

有遺族流風の言粗覚へられし

を集神哥の詞を撰且つ古老の

口号を聞て都て冊となすもの

なり

    

 時                 (時の字、原文は古字。転写者)

大清康煕五十年辛卯三月廿四日

 

     摂政  越来王子 朝奇

      

       識名親方盛命

  三司官  田嶋親方朝由

       浦添親方良意

 

  奉行   松村按司

 

       座喜味親雲上

 主取    前津覇親雲上

       立津親雲上

 

    筆者   瑞慶田筑登之親雲上

 

 

  乾坤 

 

てたききやなし  おてた  日天の事

おつききやなし  おつき  月天の事

はなあたへ  花園の事

 

人倫

 

くわうていかなし  皇帝ノ御事

しより天かなし美御前  主上の御事

おしゆかなし共称奉申  主上の御事

みきよちやの美御前かなし 御妃の御事

中城の美御前かなし  御太子の御事

あやあまへ  国母の御事

 天かなしより美御前ヨリ御称呼

おはんぎやなし 同上御孫部より称呼

某のあんしきやなし       

 御太子御妃並御子様方御嫁部の御事

某のおまへ  國々のあんしへ

おなちやら  右の室

あすたへ  三司官

おやかたへ  親方部

おものぶぎやう  御物奉行

おさすいのそば  御鎖之側

おさうしきよい  御双紙庫裡

泊地頭   那覇里主

みものくすく  御物城

石奉行  木奉行  丸奉行

鍛冶奉行  此外の諸奉行各名の様に称呼

當親雲た  勢頭親雲上た  里之子た

筑登之た  花當      小赤頭

あこむしたれまへ    うちかた共云

 右の婦人はむかし如斯申候     なり

こがねがなし  皇子皇女御幼稚の御

 美称なり

おめぐわ部  右御幼称御成人に不限如斯

  申奉るなり

やしゆこ   田舎衆中の女房

あむ     百姓の妻

お世おわつ〇〇  摂政の事

よあすたへ  御さはくり共云  三司官

くそし   医師

まゑなご  女の事敬て申を云 ゑなご共云

おめとぢや  兄弟の事おとちやむだとも

 おめと云字をいふ時は敬ふ言葉なり

 只おとぢや共云

おめすざ  兄の事

おめをつと  弟の事 をつと共云

おめけり  女の方より男兄弟を云

おめなり  男より姉妹を云 只おなり共

おめあね  姉の事

 

時候

 

わかおれつみ  二三月麦の穂出るひを云

わか夏  四五月穂出るひを云

けふ  今日

ゆまんぐい  夕間暮

あちや  明日

あさて  明後日

なあちや  翌日

こねや  〇の時分と云事 このへ共云

なあさて  (ヨク)(ヨク)(ジツ)

すとめて  朝の事 和詞にはつとめてと云

すかま  四ツ時分

わかひるま  九ツ時分ひるまとは八時分也  

こしめ時分  入相の事 入相鐘をこじめと云

よこなひ  宵也 やうなひ共

ねか  後刻なり ねかいまうれと云 後刻にされ

    と云事なり

なま  只今

こゑたつき  越た月なり

こんつき  今月なり

たつき  立月也 立の字略するなるへし

にやみつき  来来月の事

こぞ  去年

みちよなて  去々年

ことし  今年

やあに  来年

をつてい 一昨日(ヲトゝヒ)

きにふ  昨日

みすとめて  未明の事 和詞には明闇と云

 琉歌に  みすとめておけて庭むかて見れは

      あやはへるむさうか花とそよさ

ゆづくひ  夕附日 和詞にも有

 俗語に よさむてまちきよおり 是は

 町行折ならん 琉哥によすすめか

 なれはありちをられらぬおめさとか

 使のにやきよらとめは 

ゆふへ  夕部

ねぶりをり  賦折 俗にはねむじやれ

かいしやう  開静日出(ジツシュt)(バウ)の楼鐘百八の声

をいふ

こじめ  ()()() 節用集には如斯よま

せるなりミメは通音なる故ならん黄昏(クアウコン)  (黄昏の左横にタソガレとある、転写者)

  (シュツ)の楼鐘百八の聲を云うなり  (戌の左横にトキとある、転写者)

よなか  夜半(ヤハン)()の楼鐘百八のを云

ねくらく  平旦 寅のひならん

ゆふまくれ  (ユフ)(マグレ)と書ならん

昏鐘鳴のひ あかふくらふの時(    )

ひつちへちやはる  終日〇事

よながと  通夜(ヨモスカラ)の事なり

あかがい  日光暉をいふ 夜の明んとする

時分もいふ 映の字か

 

  支体

 

みおむき  御顔の事

みおむきやうへ  美御頭なり

うむしゆこ  歯の事也 しよんしよく共いふ

むしん  いれかみ共いふ(カヅラ)の事

 

氣形

 

みやかい  鶏の事 庭鳥ともいふ 庭飼と書

あひら  (アヒル)の事 あへら共云

があなあ  鵞の事

があとり  鴨の事

つかなひばうと  鳩の事 やばうと 鴿(イヘハト)

よもとり  雀の事

ちちよゐ  千鳥

はべる   蝶の事

あけづ  蜻蛉の事  和詞にはあきつ

と云 日本国の形あきつに似たれは日本

の惣名を秋津嶋共 秋津國とも申也

ずいんずいん  蛍をいふ ひきややともいふ

ひやくさむしやむし  (エヒ)の事 海老共いふ

かきよせむしやもち  蟹の事なり

むかしは山の大屋子御棒物なりと 今の山當也

 

草木

 

しつくわくわのはな  俗になはるはな共云

すいしゆんのはな  花馨して紫なり

葉は大体きはに似たりむかし官女

もてあそひ給ひたるとなり

もへくわのはな  茉莉花

きいはなのはな  桂花

らんのはな  さいらんとも云 蘭〇花

 

器材

 

こかね  金子なり

なむぢや  銀子なり 和詞に南鐐(ナンレウ)と云

あこかね  銅なり

しろかね  錫

くろかね  銕

たまかはら  玉珈玻ラ    (ラはワープロにて変換不可:転写者)

おむきよし  御腰物

みすへご  御小刀也 和詞にはそへごと云

むきやむさし  御髪指

みおそへさし  御副差

みよまへしむちへ  金の御箸極上の

美称なり

みよむしつきのむはし

正式御盆かなし御上り被召御はしより

別に右の御箸引御菓子盆子にのせ

御飾まて御側に被居置る也

みつむはいし  すすき箸なり 上の等は

はしの口に筆のすのやうにして巣の

付たるとなり むかしは御内原にて

女性方へ御振廻被下時は大小身に

よらす御菓子盆壱にて小三人も御

寄合被下候此時は右のかはし、〇候由也

おとくぼん  御徳盆

正式の御盆なり

めしよわへおみこし  御腰物

是は御二通有之壱通は外おちよは〇

且又節供〃に御召壱通は番の日

中下庫裡御出仕の御時被召也

おくわしぼん  まゑなご部の御盆なり

むきやがみ  御鏡なり

みくし  御櫛

おむきよへん  御瓶の惣名なり

玉だれおむきよへん

美御前揃玉すきつる御瓶

みはうとう  三合御瓶 但足あり

いつのこへん  五合瓶

なかじろ  七合瓶 ななのこへん共云

おなんたう 御水取用の御瓶

かなぶち  三合升

もんなん  四合升

むきやま  鍋の事

むきやまかい 鍋匙

おはうちや  たちもの共云 包丁 

たもの  焼物を〇略した〇か  薪木麁を

薪と云 細を(タキゝ)と云

とぼし  明松 たいまつ 續松共書也

おとうろ  御行燈の事也

ときしみ  燈心 とうずむ共いふ

きみしくわん  物を置平盆

みおやもの  何物にても御物は如此申なり

ほいはん御盆  金外はほりすかにして内はな

耳御盆  金

あやなみやし  御筵の事

おまつくわ  御枕

みごしやん  御杖

むきやび  紙

みすゞひ   御硯

おむきやたか  御傘

みさあなあ  同上

おみあふり  冷傘

銭ちよこもり 百文の事 (イチ)こもり()こもり

九百文まては同し

銭ちよなわ  壱〇文の事

となわ はたなわ みしゆなわ 三十〆

まていふなり

むちへつくり  御神酒貯ふ器なり

ちよなかもり  壱合也 となかもりまては同

みそかけ  衣架と書

おむきよはん  御花米(イル)る器なり

おさんぼん  御茶之子なと入器なり

辻うちこい  辻なしはうちこいと云平板也

おまかり  茶碗の類をいふ 和詞にもまかり

わんほうまかり  大まかりの事

おそろい  御菜皿の事 それい共云

みおきれとり  火取なり

みちやう  弓の事 和詞にはみたらしと

いふ

みおじやらい  御草履の事 さばとも

いふ 和詞にもさばと云 雨降なとに草

履蹈て道行時泥又は水なと草履

にて裳にはねかくるをさばうちと

いふ

みやしぢや  御木履の事なり 和詞には

あしだと云 徒然草に女のはける

あしたにて作れる笛には秋の鹿〇よる

と云々

こりようそく  御料足と書なり

御姫様御婚〇礼のとき御婿方より

献上の鳥目のことなり

みおうね  御船の事 おうね共いふ

むちへもく  御具器又は神酒入のも申也

そはうんかき  ちねぶ共いふ

 

家屋 

 

もんだすい  百浦添御本殿

こかねおとん 常の御殿

よぼこり  よりむち 御朝夕 供御

            調御殿なり

よのちゞ  むかしよほこりの北に有之たるとなり

もんなみ  百次 大臺所の事

御書院がま  奥御書院

御書院  南風の御殿

西の御殿  御番所  君袴

きみほこりおぢやう  奉神門

ながおぢやう   廣福門

かごゐせおぢやう  漏刻門

ひぎやおぢやう  瑞泉門

あまゑおちやう  歓會門

うへあやちやう  守禮之邦門

みものおぢやう  此御門は  尚質尊君

御世新に開 むかしはまものあさなと申て

御献有之たると也

よそへちのおちやう  右掖門

ほこりおちやう  久慶門

かわるめのおちやう

おなかおちやう  淑順門

此御門  尚質尊君美世に淑順の額掛

あかたおちやう  美福門

そへつきおちやう  継世門

しろかねおちやう  あさなの門

たかあさな  御城ひかしの鐘楼なり

しまそへあざな  西の鐘楼なり

かまい  官女の(ヨウ)(ソン)かしく所なり (饔飧の左横にアサカレヒ ユウカレヒとある)

おぢきやいどころ  平等所

おほみおどん  大美御殿

よまさり

にし  雪隠の事 俗のとうす 東司と書

おんぐわ  御蔵の事なり

 

衣服  

 

たまむきやぶり  玉の御冠

たうむしよ  唐御衣

おやむしよ  御衣

とむしよむはかま  御胴衣御袴なり

おほみききよび  御紳なり

みひつきん  御鼻紙 御鼻巾と書〇

なかむさじ  長御巾なり

むさじ  御手拭

しらしよむしよ  しるむしよ共 白き御衣なり

首里王府御双紙にも見よ

あふはせをむしよ  青芭蕉御衣なり

按司部束帯の時 着たまふ四時用之

ちやうぎぬ  朝衣 三司官以下束帯の

時着之 四時用之

あしやげこむね  緞子なとに五色の繍

有之 大人御婚礼の時着給ふ衣なり

しゆはあ  手帕と書〇 大人御婚礼

之時 婦人夫の所へ嫁する時かみに被る

巾なり

およぎ  御宿衣と書  (御宿衣のルビが不鮮明)

おうどむしよ  おうど共書

むきやちや  御蚊帳

むちやなし  夏衣の惣名なり

ひらぬき  眞苧布又は續はせおを紺に

染裏を付る袷なり むかしは女性正式の

衣とす

につまぬき  みつまぬき共云

禁中 女官夏冬共正式褺の衣也

袷重着は不仕なり そなへこちや勢頭部

御規式の御盆かなしおしやけらるとき此

着かたこしぬきにて御宮仕なり

今も有之事也

すゑんみこちやの御盆かなし

むかし正式にすゑんみこちやにておし

あかる御朝夕の供御也 御規式まて

おはつをきろしめし御残は大勢部

そなへこちやせと部へ御給 是は毎日おこん

くわのせとみさにりにて番頭に大臺所、おやけく也

御膳賦の品々又はみかまを上させ御(ナカ)

にてそなへこちやせと部へあくれは

火鉢と申 座敷にておけらへ〇〇御食

つきあは〇みおはんと申  〇御

の事なり 常のお盆かなしはよりむ〇

にて御けらへおしあかる 近代

尚質王かなし 御世まては如此となり

おほのがなし

和詞にはおものと云 源氏桐壷の巻に

大床子御ものなと〇と有 おものとは

御膳を申也 (オモノ)とよめりと云々

御時なふり 〇じろもの

  と有 形遠と書と有

すゑんのおつさへら いぢへやうおつさうれ

内裏晩のさくりの時うたふ詞なり

外の人の居らば出てゝ参れと云事也

あかゞへこと  火事のことなり

おぼこひかなし  御機嫌能被爲遊御事也 (ごきげんよくあそばされるおんことなり)

おいねけ  御幼稚の事なり

をふなべ  よ〇なべ共云 (   )同

とふにむかあ  〇 も 〇 む(    )共

條々と云

ならへずきらす  常住の事

おちやいめしやれ  極敬ふ言葉也 按司部は

ちやいむしやれと云なり

おうらなへおかみ  御伺いする事也

あふれ  人の去来又は何そ物なと互贈賜

するにも申事なり

おへちやこと  御悔を云

おんたさ  威光有て重々したる様也

番の日番中に諸間切より上る捧物也

くわゐ  田芋の事

しぶい  冬瓜 鴨瓜とも云

わかむしやもち  元三の御捧物

いか こほしめ 烏賊 たこ 鮹 章魚

とも書 此類也

干瀬くみ御捧物

さゞい 栄螺 びる ()() おやすら

()(ヅク) 〇け

やまもゝ

国頭 慶良間嶋より御捧物

しらつなの御初  なまむしやもち

那覇より上る

山の御初  おんちやう椎上

歳暮の御捧

なまむしやもち かれむしやもち

むはじきやみ 此外にも餘多上る大體

記之

寄物の御初

へと ()(ルカ)の事  しゆこ

知念 玉城より上りたるとなり    

よね ゆき  米の事

又砂をもよねといふ事有 元三の旦内

裡の御庭に砂を置をよねまくと

いふなり

けし  鶯粟の事也

ごま  胡麻 白きを白麻と云 黒きを

烏麻といふ

ふすめみおはに  熏美御飯と書 赤飯

の事也 かしきいゝともいふ 和詞には こわ

めし こはいひとも云 強飯共いふ

みおばに 美飯の事也 おはに共いふ

おちやのこ  (モチ)()の惣名也

おくすり  御酒の事なり

首里王府御双紙にも見よ

あまおさけ  〇の事

おむしやく  御神酒の事也 むしやくみき共云

和詞にもみきと云 かみみきと云説あり

口にて米をかみくたきて昔は酒を作る

と呉竹集に見よ

おむしよ  御味噌の事也

みつくりみや  むはじやみや共云 麦味噌也

おしたて  醤油の事也 俗語にはすたてと云

おはいり  酢の事なり

おさた  御砂糖なり  (さ、たの右下に引、引とある、これは長音記号)   

じんだおもしよ  糠味噌の事なり

和詞にも云 徒然草に後世を思は〇

ものは糂汰瓶一も持ましき事なり

と有 ぬかみそ入壷とあり

おすゑんべい  御仙餅

おひやが         (がの右下に引の字)

おましほ  塩の事也 捷用雲箋に海霜

おすいづめ おさいしよ かすざい

焼酎の糟を云

ついづめ  たうふの糟を云

おたうふ  御豆腐なり

むきやしきい  芋の事 眞芋と田芋

たういもとははんすいもの事也 註 相違カ

みおべゐ  水の事也 あまもの共云

まめな  おやしの事 豆菜なり

むはなはぢき  すいたみやつい 高菜漬也

ああせ  醤物の事

たいこね  (タイ)(コン) おほね共云

きたいこね  ()(タイ)(コン)  (左横ににんじんとある)

たみやつい  菜の事也

みきやむだ  蕪の事 うむでい共いふ

王府御双紙にみかふらと有 和詞にも

かふらと云

きむきやうと  仙本の事ひらと云

きむびら  薤の事也 きりひら共いふ

おむきやうと  蒜の事 俗にはへるといふ

たかなり  茄子の事 (シロ)(ナスビ) (ナガ)(ナスビ)

崑崙瓜共云

ながふゑ  なへらの事 長瓜とも書か

和詞には へちま 絲瓜 菜瓜 布瓜共云

くわんとうり  西瓜 水瓜共云

いちよび  ()()() 苺子の事

ふらう  豇豆の事 或菜豆共云

  (シロ)(ササ)() (アカ)(ササ)() (アヤ)(ササ)()

こうすい  ()(スイ)の事なり

うへきやう  蘹香 茴香共書

かはしな  ()()()の事 くさきな共〇

てだな  ()()の事

よやけむしやもち  藻の事

みがん  ()(ゲン)なり 薄

つのあつため  牛肉の事

つかないのあつため  豕の事

かうのあつため  鹿肉

やまあつため  山猪

ひゝしやあつため  羊肉

こかむにやい  鶏卵の事

俗語 こか共 玉子共いふ

むにやい  九年母の事

こかねくねぶ たいたい 橙と書 此外惣して

如斯申なり

もゝあゝすへ  漬楊梅の事

ひわ  枇杷なり

ひいしやぐ  芭蕉の実也

おしやしもの  おそないを云 俗に しやしもの

むきやてもの  御(カテ)物の事也

おからもの  鮹 鰹の類をいふ

おぼい  水の事也

 

言語

 

おつされ  物を申さんと案内をこふ事

おつさうれ  是に来れと云事なり

ちと敬う方にはいまうれと云

みおやたいり  公事を云

むかしけさし  太古いふ事也

だんきよと  尤と云事

だに  誠にと云 げにもと云心にも叶

みおやすら  進上の事也 お〇〇ら共云

からめき  勤め営む事なり

おみぼけ  たまもの 賜をいふ

みおみのけ  言上の事 只おみのけと云

時は貴人へも云

みおむつかい  奉屈請事

みおみしやく  御み手つから諸臣へ御

酒下さるを云

もりつき  次酒の事 王府御双紙に各

盞にておやしもり次はせん御酒

よりと有

あふたふと  仏神を信仰する詞也

和詞にはあなたふとと云 呉竹集に

あり 詞林三知抄に安尊あなたうと

と書り あら貴の心也

てすりあけ  合掌しておかみをする事

おたかべ  神前に祈願するをいふ

おむしやたゐ  行幸の時御先備の事

おむしづき  供奉する事をいふ

た  舌音にて引く時は案内(    )舌音つめて    

   いふ時は衆多の心なり 親雲上た里之子

   たと云類なり 又極上敬ふ時は舌音

   重々として長々引也 声のひゞきに

   より高下有事なり

きじやりきじやり  位階段々の事を云

源氏帚木巻にしなさたまりたる中にも

きさみきさみありて 註 次第次第の心也と云々

よしろて  参進する事 王府御双紙に

よしろていまふさしむしやへるやうと

あり

おしられ  物を申上事

およせ  上より命せらるゝ事いふ

いじきやおした  左様てはなくと云事也

さんぜんざう  ならいすきらいす共云

常住不断の事なり

おかむきやち  拝合す事なり

おちよわひめしよ(       )の事なり   

もゝかほうしや(   )  (   )を(   )ふりて也

もゝすてやへて  冥加難有といふ事也

おやむめさたうと  恐憚り尊ふ事也

おとろしや  

しばしば  (サク)なり 物のしけき事なり

和歌にも 和田の原よせくる浪のしばしばも

     みまくそほしき玉つしまもり   

わかめづ  若水 去年の水を春立日汲を云

日本にては(モン)()のつかさ此水き内裏に奉れは

あさかれゐにて是をきくしめすなり

年中の邪気をのそくと云本文侍るなり

春を得てけふ奉る若水を

ちとせの影や先うかふらん 呉竹

集に見よ

わさらしや  はやき心なり 和詞にも

同し はき稲を早稲(ワサイネ)と云う

みつと  土産(ミヤケ)の事なり

いちよなしや  事業に遮られ隙なき

をいふ

みしきよま  (ムギ)米の御初をいふ

ちやうはれ 萬歳     〇幾久しく

御座ませといふことなり 琉歌に

おきもかなしけの首より天かなし

あすらまんちやうはれ拝てすてら

きよらさ  美麗なり 清の字を書

和詞にも通ふ 徒然草に萬にき

よらを尽しても 又は手足なとの

きよらに肥あふらつきたらんと

有も此心なり

けらいて  造営並調和の事也

おもろさうしに十尋とのけ

らいて 八尋とのけらいてと有は

造営の事 食物なとのけらいてと

いふ時は調和なり 又けらい言

葉と云時は上へ慇懃に言葉

をとり繕ひ物を申をいふ

おしやかれ  召上りの心也

おさゐめしよわれ  (    )心なり

あかふれ  おぼかふ〇  〇食するなり

そだて  養育するをいふ

あうれ  来れと云事

おいらい  答る事 和詞にも叶

伊勢物語にいらへもせぬなとゝ有

おむしらしや  (ムマ)()をいふ 俗にまあさと云

おかはしや  かうはしき也 馨なり

およたしや  (ヨキ)といふことなり

おかなしや  愛敬する心なり

俗にむさうさともいふ

こな  組の字か 一組二組なとを ちよ

こな 二こなと云

王府御双紙に神人数を神こなの

あむしられたと有

ちよたて  酒なと一對の事をちよたてと云

おしられ  物を申上る事

ねごねご  緩々静にして懇切〇心なり

みすここまく  能々(    )の心なり

しむじむと  染々と    和詞にもしみしみと

いろしいろし  取分ての心なり

おむちへつころ  御自也 おみてから共云

いこまち  とよむ事

とむたてれ  他所へ人を使ひぬる時

こしらへる云 いしゆかれ共いふ

おへむめしよはむ  御召寄の事

およびめしよはへむ共云

ひぢやに  まれにの心 又終にと云心も有

非常と書か

たへむす  実にさあれはと云事也

さへむ  それさへ  琉歌に

木草さへむ風のおせはそよめきよれ

おなさけにまやぬ人やないさめ

とづけ  物を云ひ附る事なり

おさむだい  食物の餕餘を云 又さむたい   

ともわけ共云 

みすがり  御輿(    )なり

おねびき  御婚礼(   )いふ  ねひき 和言也

おちやむなし  柔和にして優游なる

兒をいふ

おんだいかなし  いかり給ふを云 逆鱗也

おねたさ  同上 源氏葵の巻にねたさ

になんとの給へはと有

あまこま  和詞に あなたこなた也

おいしかきのさかへて

内裏の御石垣の崩るゝを云

おかげい  御留守といふ事なり

おはつかさ  些少なるをいふ 僅の心か

おかけれ  器なとに物入るゝをいふ

つめて  急く心なり しはしはの心もある

あかさて  幼児の者をいふ

あにたやべる  左様にて侍るなり 

然の字に叶か

をほう  いらへろ言葉なり

  應の字に當

おほう  承てい〇へ(   )なり

諾の字に當 件の二ツ音重長く引

時は極の敬ふなり 音軽短く引時は

軽く敬ふ言葉なり 音の軽長により

高下有事なり

 小学 張思叔座右銘ニ然諾ハ必ス重ク應ス註ニ然諾ハ皆應スルノ辞應スル之重ケレハ則

  践ンコトヲ思フ云々 然トハ如是也 諾ハ(ウケ)(ウナツク)之辞

  也   

  源氏御幸の巻にあふみの君こなたにと

  めせはをといとけさやかに聞えて出

きたりをといらへたる声なりと有

あにやあやへらぬ  左様にては侍らぬ也

否の字に當るか 否は不然なり

あやへらぬ共 あゝゐ共いふ

あにやなやへらぬ  左様にはえならぬ也

おけかはさる言葉なり 只ならぬ

とも云 下の(       )ふ也

いむまへまし(         )也 イマイマシキ

しつきやい  悉皆と書 惣様の事也

伊勢物語 源氏にも惣様と云

みおきれ  おまあつ共 火を云 和詞にも

おきと云

ねむさ  遅き事 源氏ににふきと有

其時は鈍字ならん

をそましや  をそろしき也

  和詞にも有 源氏帚木巻にをそましき